バッティングというものは非常に奥が深く、繊細です。ついつい自分の感覚を押し付けがちになるバッティングのアドバイス。でも、自分の感覚はそもそも言葉にするのが難しく、また相手の感覚と必ずしも一致するとは限りません。
そこで今回ご紹介するのはあの落合博満氏の著書「落合博満バッティングの理屈」です。
決して押しつける内容ではなく『こうしたら⇒こうなるから⇒こうした方がいいだろう』というように落合さんが考え抜いたバッティングの理屈そのものが根拠に基づいて書かれています。
前述の通りバッティングは感覚によるところが大きく、同じ表現でも子どもによっては合う合わない(伝わる伝わらない)が顕著に表れます。なぜなのか?という「理屈」を理解しておけば、選手により伝わりやすい言葉を選びながらアドバイスできるのではないかと思います。
そして読書などで勉強しているコーチとそうでないコーチとの差、子供たちは見抜きますよ。
特にイマドキの子は「なんで?」という問いに納得できる回答を得られないと本気で取り組めない子が多い印象ですね。
「バッティングとはこういうモノ」っていう感覚的な説明だけでは納得できないんやね
もくじ
「落合博満バッティングの理屈」はこんな本
本の中身を知るには目次を見るのが1番。という事で、各章のタイトルをご紹介しながら内容を見ていきましょう。
第2章 目とバッティング
第3章 軸足の使い方
第4章 下半身のメカニズム
第5章 上半身のメカニズム
第6章 スタンスについて考える
第7章 大きく速いスイングを身に付けよう
第8章 バットの選び方、握り方
第9章 野球選手のためのトレーニングとは
第10章 いくつかの”どうすればいいか”を解決する
第11章 写真で確認する正しい技術と動き
第12章 腕とバッティング
第13章 バッティング技術が向上する練習法
第14章 相手バッテリーを丸裸にする
第15章 机の上でも野球をやろう
第16章 技術も上達させる野球の考え方
第17章 選手と指導者は二人三脚でレベルアップを目指そう
目や上半身、下半身などの身体の部位からメンタル面、考え方について、細かく細分化してそれぞれについての「理屈」が解説されています。
おすすめできるポイント
おすすめポイントはこんな感じ
- コーチなら必須!感覚を言葉にできるようになる
- 身体の使い方だけにとどまらない
- なんと言っても著者が落合博満氏
その1:コーチなら必須!感覚を言葉にできるようになる
冒頭でも述べましたが「こういうモノだ」という根拠のない指導ではイマドキの子はついてきません。ですが本書には、例えば「ボールを押し込む」という感覚的な表現についても具体的にどういうことなのか言語化されています。このように「こうやって、グッとやんねん」が具体的な言葉に変わるというのは、指導者としてのレベルアップに他ならないと思います。
理屈さえ整理できれば、自分の言葉で説明できるしね
その2:身体の使い方だけにとどまらない
バッティングに関する体の使い方はもちろんのこと、トレーニング方法や取り組む姿勢、さらに”考え方”にまで言及されており、コーチとして総合的なレベルアップが期待できます。
その3:なんと言っても著者が落合博満氏
3度の三冠王である落合博満氏。どれだけすごい事を言われても、やはり実績を残した人の言葉というのは重みが違います。落合博満氏の本は何冊か読みましたが、周りには練習していないように見せて裏でめちゃくちゃ研究、練習してた落合氏。
仮にあなたが新米コーチで、チームの年輩コーチと議論するような場面では例えば「落合さんが本に書いてたんですけどね」と前置きすれば角が立たない言い方ができるかもしれませんね。
残念!もう一歩なポイント
中には合わない理屈もある
僕自身は落合博満さんこそバッティングにおける神だと思っています。バットという棒を持たせて、手のひらサイズの球を打たせたらあの方よりうまく打てる方はいないと思っています。それでも、全ての理論が、完全に肚落ちしないというのは、やはりあります。あなたも中には「いや~、そうかな?」と思う点が出てくるかもしれません。でもここで大事なのは、自分の考えと違うからと言って完全に排除しないことだと思います。「こういう考え方もあるんや」と素直に受け止める心が、コーチとしての幅を広げてくれるんじゃないでしょうか。それに、自分の考えしか受け入れないのであれば、そもそも読書する意味がないですよね。
事例に登場する選手が古い
2015年発売の本ではありますが、落合さんが事例に上がる選手がちょっと古いw
王さんは超有名だから大丈夫ですが、川上哲治氏、八重樫幸雄氏、タフィー・ローズ氏、中村紀洋氏…このあたりは40手前の僕はなんとかわかりますが、他には名前はなんとか…という選手もチラホラ。でも全て写真付きで紹介されてるので、理解するのに何の問題もないんですけどね。
まとめ:指導者は読んでおいて損のない一冊
僕自身、読み終えた後にアドバイスのバリエーションが増えたことを実感しました。中には最近YouTubeで見た事と同じ内容も登場し、『やっぱりそうか』と思う事もありました。目の前の選手に合うかどうかはわかりませんが、引き出しは多い方がいいに決まっています。ちなみに僕は早速アドバイスしてみた「踏み出す足の着き方」がハマった選手がいて、美味しいお酒が飲めました。
三度の三冠王、落合博満氏が研究に研究を重ねたバッティングの理屈、読んでおいてマイナスになることはまずないでしょう。
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