星野リゾート4代目社長 星野佳路氏。彼をメディアで拝見する度、その発言内容や表情、たんたんと語るその話し方が非常に好きで、そもそも僕自身が星野佳路氏その人に大変興味を持っていた。
そこまでではないにしても、ここ数年で一気に日本のホテル業界のリーダー的存在となった星野リゾートの社長、更にはその経営手腕に興味を持つ人は多いのではないでしょうか?
今回僕が読んだ(正確にはAmazonのオーディブルで聴いた)本は『星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則 中沢康彦(日経BP)』
結論から言って、経営者はもちろん、これからを担うリーダーの方々に読んで欲しい一冊でした。
『星のリゾートの教科書』は「教科書通り」を肯定する
本書は端的に言ってしまうと「経営とは教科書通りにやることだ」というメインテーマになっています。これはある種 僕の概念を根底から覆すメインテーマでした。僕のこれまでのイメージでは、教科書はどちらかというと机上の空論。「環境も違うし、そんなにうまくいくかな…」というとらえ方をしていました。また経営やマネジメントといった類のものは、リーダーが知恵を絞って目指す方向を決め、メンバーを引っ張り、また巻き込んで作り上げていくもの。どちらかというとリーダーの「センス」や「手腕」によるところが大きいというイメージがありました。またその「センス」や「手腕」というのはある意味聖域化されていて、簡単には模倣できないものという風に考えていました。ですから経営とは、「リーダーの独特の感性から生み出される唯一無二、一度限りの魔法」のようなイメージだったのです。
しかし、これを冒頭からひっくり返されました。星野社長いわく「経営は教科書通りにやること」だそうです。これでけ事業を拡大されている星野社長がおっしゃるのですから、重みがあります。
『星野リゾートの教科書』読者の声
書かれている理論を理解すると同時に、「自社にどのように当てはめればいいのか」「どこを変える必要があるのか」と考えながら読む。自社の具体的な悩みを考えながら読んでいると、頭の中が次第に整理されていき、やがて打つべき対策が見えてくる… (星野佳路) 『星野リゾートの教科書』
— 「人を幸せにする」経営を学ぶ 読書会 (@Happy_Keiei) January 26, 2021
友達にオススメされたので「星野リゾートの教科書」という本を読みました。
「教科書の美味しいところだけつまんむのではだめだ。100%その教科書通りにマネできていなかったら成功できない」という言葉が耳が痛かったです😓
なので定期的にフォーサイトの戦略立案編を読むことにしました。— みみだい 社労士2022年合格目標 (@rhrBorig7FypA5L) January 19, 2021
『星野リゾートの教科書』より引用すると、
[私の経験から、役に立つ教科書は、「今、自分が直面している課題を扱うシンプルな理論」であることが多い。]経営とか、マーケティングとか、分からない分野なので、読み漁っているけど、読むべき本を選ぶときの、指標になる考え方な気がする。 pic.twitter.com/4DgcQANKY0
— ぽっこり山 (@vALNQcfMP) January 9, 2021
『星野リゾートの教科書』のかんたん要約
もう少し具体的に見ていきたいと思います。先にも述べたように星野社長は「経営というものは教科書の通りにやるのがいい」ということをおっしゃいます。その理由として以下のようなものを挙げられています。(僕がかみ砕いた内容です)
- 教科書=経営に関する本は専門家が色んなデータをもとに色んな分析を行い、長きにわたって研究した成果である
- 一人の人間の経験に基づく判断よりよっぽど信頼できる
- ”その教科書に従う”という信念があると軸がブレない
- 信念がブレないと自信を持つことができ、意思決定や行動がブレない
- 自分の「思い」だけでやるから途中で不安になってしまい、ブレてしまう。
星野社長は毎回壁にぶつかっては本屋さんに行くそうです。本の選び方にもポイントがあります。平積みの本はいわゆる「流行りもの」で、本当に世に認められたかどうかが分からないため買わないそうです。むしろ棚に入れられてその本屋さんに在庫が一冊しかないような本を選ぶことが多いそう。そういった本は一時の流行り廃りではなく、発売から時間が経っても支持され、本屋さんに生き残っているものだから。というのが理由です。また、名経営者の成功談のようなものは、それこそ「センス」に拠るところが大きい為あまり選ばず、研究者が書いたものをよく選択するそうです。
また星野社長は参考にすると決めた教科書は100%徹底的に実践することが重要と話します。「100%教科書通り」です。たとえば何かを改善するには3つの事を見直せということが教科書にかいてあるならば、2つではなく必ず3つをやるということ。3つのうち取り入れやすい2つのみを実践するなどということはもはや対策にならず、まずは3つとも教科書通り徹底的にやることが重要だと話します。微調整は一通り教科書通り対策を打ったのちに状況を見て行うこととのことです。
なるほど確かに、僕が最近感銘を受けた言葉にこんなものがあります。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
オットー・ビスマルク(ドイツ帝国首相)
つまり星野社長もご自身の経験に頼った判断ではなく、研究者たちが心血を注いできた「歴史」に学ぶ姿勢を強く持っているということだと思います。
本書では星野社長が実践する30冊もの名著が紹介されています。星野社長が課題に直面する度に実際に参考にした教科書です。
本書では星野リゾートグループで実際にあった「課題」、その際に星野社長が参考にした「教科書とその教え」、星野社長が「実際に起こした行動」、その「結果」がひとまとまりになって構成されており、多くの事例が紹介されています。
もちろん、事例によって毎回置かれる状況が全く違います。地域内でどのような立ち位置にいるのか、また地域自体が周辺のリゾート地とどのような力関係にあるのか…などです。当然それぞれの状況に合わせた教科書選びがなされ、異なった対策をとられます。
ですから、教科書通りが大切なのはもちろんなのですが、どの教科書を参考にするのか、状況に応じた教科書選びが最も大事。ある意味そこがポイントだと理解しました。
まとめ
今回『星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則 中沢康彦(日経BP)』のメッセージとして、以下のようにまとめさせていただきました。
- 100%教科書通りに実施する事が重要
- どの教科書を参考にするのかという教科書選びがさらに重要
でも結局どの教科書がいいかなんてわからないし、それこそセンスなんじゃないの?と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、僕はそうは思いません。なぜなら、星野社長は課題に直面した際、必ず詳細に状況分析をしています。アンケートと取ったり市場調査をしたりと、徹底的にデータを集めた上で教科書選び(どの戦略でいくか)をしています。これは僕たちが会社で課題に直面した時と同じです。多くのリーダーは詳細を(それも徹底的に)分析することをせず「どうしたもんかな~」と頭を悩ませているのではないでしょうか?
また、2つ目の重要要素「教科書選び」。これは日頃からいかに本を読んでいるか、なのではないでしょうか。本でなくても構わないと思います。常にアンテナを貼り、リーダー自身が研鑽しているからいざというときに引き出しを選択できるし、適当なものがなくても探し方がわかる。でも普段から成り行きで仕事をしているリーダーはそうはいかないでしょう。
そういう意味で、本書は非常に学びが多く、新しい考え方を教えてくれる本でした。冒頭にお話しした通り、経営者はもちろん、これからを担うリーダーの方々に読んで欲しい一冊です。
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